私どもの事務所では、相談にいらした方に対し、当事務所に相談することを決めた情報源をお伺いしています。事務所が展開している広告の効果を確かめる意味があるのです
・・・(続きはこちら) 私どもの事務所では、相談にいらした方に対し、当事務所に相談することを決めた情報源をお伺いしています。事務所が展開している広告の効果を確かめる意味があるのですが、最近は人からの紹介やチラシ、ウェブ上のバナーや動画CMといった従来からよくあったお答えに交じって、AIに聞いたら勧められた、というお答えが見られるようになりました。
AIが回答する際に広告を表示する機能が日本で提供されたのはごく最近のようですから、そうしたお客様は広告ではなく私どもの発信した内容やクチコミを学習してAIが出した判断をご覧になっていらっしゃったのだと思いますが、AIに私どもの働きぶりがどのように評価されたのか、興味深くもあり、一方で個人的にはAIの回答結果次第で誰に大事な相談を任せるのか決めるはちょっと怖いような気もします。
私ども弁護士も、日常生活や業務上のちょっとした検索の際に表示されたAIの回答を目にし、時には利用させてもらうことは多々ありますが、法的な問題に関しては明らかに事実や先例と違う回答が表示されることも少なくなく、きちんと情報元にあたって古い情報や間違った情報を参照した結果でないか十分に検討しなければ、仕事に利用することはできないなと日々感じています。ざっくりネットのどの辺を参照すれば望む情報が得られそうかあたりを付けるにはよいですけどね。
AIが弁護士にとって代わることは、今はまだ難しいと思います。法的紛争においては事実を法令や先例にあてはめて結論を出す作業が必要ですが、そのあてはめの作業には価値判断、中立の一般人ならどう考えるかという評価のプロセスが不可避で、AIはまだこの点責任を持って答えることができません。弁護士は紛争当事者のどっちの側につくかによって、依頼者のためにできるだけ有利な方向に結論を引き寄せようと議論を戦わせ、時には同じ事実を目にして正反対の主張をそれぞれ展開することもままありますが、過去の裁判所の判断や常識的な事実評価が歯止めとなって、落としどころとの範囲に自ずと限界は生じます。ですがAIはその点サービスがよすぎる点があって、人間がその回答に満足しない場合いくらでも迎合してしまい、最終的に人間が満足する回答を出してしまうように思われます。人間の弁護士ならどれだけ我田引水を重ねてお客様に有利に考えたとしても、望まれる結果を導くことができないならはっきりそう答え、お客様が不満であろうとそのご主張を丸呑みすることは(誠実な弁護士ならば)ないはずです。
AIが法令や判例だけでなく、専門家としての守るべき一線、責任という概念を再現できるのであれば、私どもの立場も危ういかもしれませんが、まだその日は遠いと思うことにしましょう。
ところで、お隣の韓国では、弁護士を付けずに民事訴訟を行われる方が日本と比べても格段に多く、そうした方の大半がAIを用いて専門家顔負けの整った書面を用意してきているという話を耳にしました。AIが自分の主張が通るだろうと回答したから訴訟に打って出た、という訴訟利用者もあるそうです。
元々日本でも韓国でも、両当事者が弁護士抜きで争う場合や両当事者弁護士ありで争う場合には約3分の2の確率で訴訟を起こした原告側が勝利するものの、片方だけが弁護士を付けた場合には弁護士を付けた側の勝率が3割ほど増えるという統計結果がありますが、AI利用が広まっている韓国では現状その傾向は変わっていないようです。
人間の弁護士は裁判で争えば負けそうな場合にはそれ以外の解決法を提示し、少しでも良い結果を得られるよう相談者を導きますが、今のところ一般的なAIにはそうした損して得取れ式の対応をするアルゴリズムは再現できてないのかもしれませんね。
5月21日、明日から日本では民事訴訟デジタル化制度が本格導入され、訴訟の場から紙の書面はおおむね排除されることが予定されています。この制度変革はさまざまな良い影響が言われているものの、誠実でない利用者が現れれば、プログラム任せで多数の訴訟手続きが展開され、内容に乏しいデジタル書面に埋もれて本当に必要な手続きの進行が妨げられたりしないのか、成り行きを見守らねばならないと思っています。